GCVの見方
 GCVは過去の一定期間において、終値ベースの株価がどれだけの傾き(勢い/スピード)をもって上昇・下落してきたかを示すオシレーター系テクニカル指標です(単位は%)。
■GCVとは
 株価の勢い(スピード)を統計学的に厳密に計測するために、GCVは直近の一定期間の終値を日付の時間順位に線形回帰させた場合の回帰係数を推定します。簡単に言うと、株価チャートに対して最も良くフィットするように定規を当てた場合の傾きを計っています。

GCVがプラスになっていれば相場は上昇してきていることを示しており、極端に大きなプラスの値を示していると相場は過熱気味であると考えられます
逆に、GCVがマイナスになっていれば相場は下落してきていることを示しており、極端に大きなマイナスの値を示していると相場は売られ過ぎであると考えられます


 また、株価を位置に例えるならば、GCVは速度に相当する概念であると言えます。よって、GCVの変化に着目するということは、速度の変化、すなわち加速度に着目しているということになります。

 例えば、自動車が一定の時間で時速20キロから40キロに加速した場合と、40キロから60キロに加速した場合、スピード自体は後者が速いものの、同じ20キロの加速でも、加速度は前者が2倍、後者が1.5倍と前者の方が大きいことがわかります。これをGCVで表わすと、GCV値は前者の方が高くなります。具体的には、一定期間に500円の株価が1000円に上昇するケースと、1000円が1500円に上昇するケースとでは、同じ500円の株価上昇でもGCV値は前者がより高くなるわけです。

株価(位置)が上昇する時には、必ずGCV(速度)がプラスになる現象が起こるはずであり、GCV(速度)がプラスになる前には必ず加速現象(GCVの陽転)が生じているはずです
逆に、株価(位置)が低下する時には必ずGCV(速度)がマイナスになる現象が起こるはずであり、GCV(速度)がマイナスになる前には必ず減速現象(GCVの陰転)が生じているはずです


 このように、GCVの陽転(上方への傾きの転換)と陰転(下方への傾きの転換)は必ず相場の上昇と下落に先行することが解ります。GCV(速度)の下降が底を打ち、切り返してくる(陽転)と、この動きを後追いするかのように株価も反発に転じ、逆にGCV(速度)の上昇がピークを打ち、下げてくる(陰転)と、この動きを後追いするかのように株価も反落に転じるケースが多くみられます。よって、GCVは高値圏で利食い、安値圏で仕込む際、有効性が高いテクニカル指標と言えます。

 GCVの変動には固定的な重心がありません。これは他のオシレーター系テクニカル指標のRSIやストキャスティックスの重心が50であり、RCIの重心が0であるのとは大きく異なります。株価が完全に横這いに推移していればGCVの水準は0になりますが、このことは必ずしもGCVが長期的に0を中心にして振れるということを意味しません。株価が長期的な上昇トレンドにあればGCVの重心はプラスに位置しますし、株価が長期的な下落トレンドにあればGCVの重心はマイナスに位置します。

GCVがプラスゾーンにある時は株価が上昇の勢いにあることを示しています
マイナスゾーンにある時には、軟調な地合いにあることを示しています

 多くのオシレーター系ツールと異なり、GCVはもみ合い相場だけでなく、トレンド相場においてもその真価を発揮します。GCVのこの二重性は、その重心が固定的でないという事実に基づいています。

 まず、他のオシレーター系ツールの場合と同様に、GCVが極端に大きなプラスやマイナスの値をとった場合に逆バリのポジションを形成することが可能です。すなわち、GCVが大きなマイナスの値をとれば買いを仕掛け、大きなプラスの値をとれば買いを手仕舞うか、売りを仕掛ける売買スタンスをとることが可能です。

 また、GCVの水準自体から相場が上昇トレンドにあるのか、下落トレンドにあるのかを判断して、トレンド系ツールの場合と同様に、順バリのポジションを形成することも可能です。例えば、GCVがプラスの水準において陽転したケースでは、上昇トレンドにあると判断された場合に、買いを仕掛けるスタンスをとることができます。一方、買いの手仕舞いはGCVの水準にかかわらず、陰転によって実行するスタンスも可能です。






■GCVの期間設定

 日々の終値を集計し、回帰直線の角度を計測・指数化した日足ベースのGCVは、株価の日々の動きを反映した短期スパンでの指標ゆえ、日々の値動きに敏感に反応する半面、いわゆるダマシも多くなります。ゴールデンチャート社では、標準的な日足GCVとして、15日GCVを基本設定としています。

 週末の終値を集計した週足ベースのGCVは中期的な株価モメンタム(株価の勢い)を示すものですが、週足GCVのピークはいわば上昇速度の頭打ちであり、上昇トレンドからの中期的な転換点となるケースが多く示されます。逆に週足GCVのボトムは下落速度の下げ止まり・底入れであり、下落トレンドからの中期的な転換点となるケースが多く示されます。ゴールデンチャート社では、標準的な週足GCVとして、12週GCVを基本設定としています。

 月末の終値を集計した月足ベースのGCVは長期的なスパンで株価の趨勢を俯瞰する性格が強く、チャートの長期的な大勢を示します。そのため、長期に渡る上昇トレンド、または長期下降トレンドの終焉に際し、GCVがプラス・マイナスに大きく振れ、ピークやボトムを付けることが多く見受けられます。ゴールデンチャート社では、標準的な月足GCVとして、12カ月GCVを基本設定としています。

短期・日足GCV→ 日々の値動きに敏感に
反応、ダマシに注意
中期・週足GCV→ ピーク・ボトムが中期
トレンドの転換点を示唆
長期・月足GCV→ 長期的なスパンで
チャートの大勢を俯瞰


 日足、週足、月足と短期〜長期でのGCVの動きをチェックすることで、「短期では過熱圏だが、中期ではまだ上値余地がありそうだ」「中期では底値圏だが、長期的には下げ止まりの兆しがまだみえない」等々、投資戦略をたてる際に、目先の動きに振り回されない、客観的なテクニカル分析が可能となります。



■ゴールデンクロス・デッドクロス
 長短2本の株価移動平均線が交差するポイントを「ゴールデンクロス」「デッドクロス」と呼び、チャートの転換点を示唆することは前に述べましたが、GCVも同様に、そのGCVの一定期間での移動平均線との交差ポイントや、周期の異なるGCVの交差ポイントをチャートの転換点として捉えることが可能です。

 GCVが、GCVの移動平均線や周期の長いGCVを下から上に突き抜ける動きで交差することを、株価移動平均線と同様に「ゴールデンクロス」と呼び、逆に、GCVが移動平均線や周期の長いGCVを上から下に突き抜ける動きで交差することを「デッドクロス」と呼びます。

 「ゴールデンクロス」は下降していた株価が上向きに転じたことを確認するシグナルとして、「デッドクロス」は上昇していた株価が下向きに転じたことを確認するシグナルとして有効に機能することがあります。ただし、「ゴールデンクロス」の前には必ずGCVの陽転が発生しているはずであり、「デッドクロス」の前には必ずGCVの陰転が発生しているはずですので、かなりの短期で設定されたGCVのクロスでない限り、シグナルとしては株価の現実の動きにやや遅れ気味になるという傾向は心得ておくべきで、相場の強気(弱気)転換の追認ポイントを認識するための手段と捉えておくのが妥当と思われます。

「ゴールデンクロス」
→GCVが移動平均線や周期の長いGCVを下から上にクロスして上抜けることをいいます(株価上昇追認のサイン)

「デッドクロス」
→GCVが移動平均線や周期の長いGCVを上から下にクロスして下抜けることをいいます(株価下落追認のサイン)

 ゴールデンチャート社では、標準的な2線の組み合わせとして、15日GCVとその10日移動平均線、12週GCVとその6週移動平均線、12カ月GCVとその6カ月移動平均線を基本設定としています。



■中期・週足GCVを利用した売買戦略例

◎買いスタンスの基本例
@ □サイン(−15%)点灯
A ○サイン(−30%)点灯
B GCVの底入れ・反発
C GCVの移動平均線とのゴールデンクロス

 @〜Cの順に分散買いを入れていくのが基本スタンスですが、□サイン(−15%)到達前にGCVが反発する場合や、□サイン(−15%)が点灯しても○サイン(−30%)には至らないで反発する場合もあります。株価上昇が期待できる銘柄なら、GCVの反発時点で買いを入れるのが妥当なケースも多く見られ、悲観が高まった時だけに買いを入れたいなら、出現の頻度は多くはありませんが、○サイン(−30%)から買いを入れるのも一手です。ただし、GCVが反発に転じても、プラスゾーンに浮上できずに反落に向かうようなら「相場は弱い」と判断し、一旦は手仕舞い、再度の底入れを待つのが損失を小さくするテクニックとなりそうです。

 注意したいのは、買いのタイミングを計る時に□サイン(−15%)や○サイン(−30%)が点灯したから、「もう下がらない」と単純に認識するのはリスクが残るという点。前述したように、□サイン(−15%)や○サイン(−30%)が表示されるまでGCVが下げ、下げ止まってから反発に向かう地点で拾うのが、リスク軽減のためのポイントといえます。


◎売りスタンスの基本例
@ ■サイン(+15%)点灯
A ●サイン(+30%)点灯
B GCVの上昇鈍化・反落
C 移動平均線とのデッドクロス

 買いの場合と同様に、必ずしも■サイン(+15%)や●サイン(+30%)が点灯してから反落に向かうとは限らないため、買い持ちならばGCVの上昇鈍化局面で利食う、あるいは売りを仕掛けることが基本スタンスです。また、反落してもプラスゾーン内で反発に転じるようなら強気継続パターンで、再度の買い持ちで成功する可能性もありそうです。いずれにせよ、概して週足GCVが株価のターニングポイントを表示するのは年に2回ないし3回程度のケースが多く、売買回数を減らしたい投資家なら、□サイン(−15%)や■サイン(+15%)が点灯した後の下げ止まり・上昇鈍化を確認して動くのがメリハリある投資行動につながりそうです。

 売りの場合でも注意したいのは、■サイン(+15%)や●サイン(+30%)の点灯で「もう上がらない」とは認識せずに、上げ止まる動きを確認して手仕舞う、あるいは売りを仕掛けるのが、リスク軽減で投資効率はよくなる傾向にあるという点です。








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